閑話休題

印刷会社の生き残り策を考えてみる

デジタル化とペーパーレス化が進む今、印刷業界はどう生き残るか?「印刷会社の生き残り策」では、厚物印刷への転身、デジタルサービスへの拡張、マーケティング支援といった新たな戦略を探ります。まずは、茹でガエルからの脱却を……。

実は私、創業前は写真製版を主業務とする印刷関連会社に勤めていました。そして、独立に際して考えていたのが脱印刷化です。当時の写真製版は、印刷関連の中では、突出してデジタル化が進んでいました(もちろん、DX&AI化の進んだ現在から見るとデジタルと言えるのか?大いに疑問ですが……)。それはさておき、今でも私は密かに印刷業界のこれからを心配するひとりです。そこで、中小の印刷会社さんが、DX&AI化の流れのなかで生き残るための方向性を考えてみたいと思います。

デジタル化、ペーパーレス化の中での印刷会社の現状
デジタル化とペーパーレス化の波は、さまざまな業界に影響を及ぼしています。なかでもとりわけ印刷業界は、この大波に直面しており、かつては企業や個人が頼りにしていた印刷物も、今では電子メールやオンラインドキュメント、デジタル広告に取って代わられつつあります。
これにより、印刷会社は収益減少という厳しい現実に直面しています。特に中小印刷会社の倒産件数が大幅に増加している状況です。今後の事業継続を考えると、従来のビジネスモデルを見直さざるを得ない状況にあります。

ですが、この世の中の大変革は印刷業界にとって必ずしも悲観的な未来を意味するわけではないと考えています。このような大きな変化は新たな機会をもたらすものです。
今、中小のすべての印刷会社が従来のビジネスモデルに固執するのではなく、時代の変化を捉え、それに適応することがは求められています。例えば、デジタル印刷技術の進化は、小ロットでのカスタマイズされた印刷物の提供を可能にしていますし、印刷を転写する媒体も紙に止まらずに様々な素材に応用されています。このように従来の紙を媒体にした大量印刷とは異なる新たな市場ニーズを掘り起こせば、生き残る道は限りなくあるはずです。

厚物・特殊印刷に転身するか、脱印刷をはかるか?
デジタル化とペーパーレスの時代が進む中、印刷業界では、生き残りをかけた戦略転換が求められています。その一つが、従来の薄紙印刷から厚物印刷や特殊印刷への転身です。
厚物印刷・特殊印刷は、フィルムやパッケージング、ビジネスカード、招待状、メニューなど、より質感が求められる領域において需要が高まっています。これらの製品は、デジタル化が進んでもなお、物理的な存在感や品質が重視されるため、印刷業界に新たなチャンスをもたらしています。もちろん、この分野への転身には、それなりの大きな設備投資が伴いますが、事前に顧客開拓を行いながら営業的地固めをしておけば、再成長の大きな機会となりえます。

一方で、「脱印刷」という選択肢もあります。
これは、従来の印刷事業から一歩踏み出し、デジタルコンテンツの制作にシフトすることを意味します。
この戦略では、WEBサイト制作、動画コンテンツの制作、ソーシャルメディアキャンペーンの企画運営、デジタル広告の制作など、デジタル領域でのサービス提供に重点を置きます(もちろん、印刷物との連携した受注の視野に入れます)。これにより、印刷会社は従来の顧客を維持・深耕するとともに、新たな顧客を開拓し、デジタル時代のニーズに応える道を切り開くことが可能になります。

どちらの戦略を選択するにしても、重要なのは市場のトレンドを正確に読み取り、自社の強みを活かすとともに、不足する知識や能力、設備を強化し、これらの分野での専門性をアピールすることが求められます。

いずれにせよ、変化を恐れず、積極的に新しい事業分野に挑むことが、印刷業界における生き残りの鍵となります。従来の枠を超えた思考と柔軟な戦略転換が、この競争の激しい業界での成功を左右することに間違いはありません。
※上記のデジタルコンテンツの制作は、すでに多くの印刷会社が取り組んでいますし、この分野で成功している印刷会社も見受けられます。しかし、実際には、大多数の印刷会社では、取り組みが中途半端になってしまっています。そのために、むしろ、赤字が増大するという本末転倒に至るケースも見受けられます。このような状況にある印刷会社は、今すぐにでも自社の強みの源泉となる技術やノウハウなどの資産を見直して再整理すべきです。その上で、印刷物との相乗効果の最大化を見据えたビジネスモデルの再構築を図ってはいかがでしょうか?

マーケティングをサポートする第三の道もある
印刷業界が直面するデジタル化の波を乗りこなすために、印刷会社が採ることができる第三の道があります。実は、この第三の道こそ私が最も推奨する事業です。

それは、マーケティング支援に特化したビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)サービスの提供です。この新たな方向性は、従来の印刷サービスの枠を超え、企業のマーケティング活動を全面的にサポートすることで、依頼主のブランドの認知度向上と顧客エンゲージメントを促進に貢献するものです。

マーケティング支援BPOサービスとは、デジタルマーケティング、コンテンツ制作、ソーシャルメディア管理、そして顧客関係管理(CRM)の最適化から、伝統的な印刷物の製作と配布に至るまで、幅広いサービスを提供するものです。また、人手不足が叫ばれる今日、多くの企業が様々な業務においてアウトソーシング化にシフトしている現状があります。マーケティング支援BPOサービスは、この世の中の大きな潮流に乗る新しいビジネスモデルです。

もちろん、この新事業の推進にあたっては、マーケティングに関するより専門的な知識や能力が求められます。しかし、その一方で新たな設備投資の必要はなく、あくまでも現有設備と人材で運営可能です。

このBPOサービスにより印刷会社は、単なる印刷サービスプロバイダーとしてではなく、顧客のビジネス成長を促進する価値あるパートナーとしての地位を確立することができます。

※実は弊社アンツ・コンセプトにおいては、もう10年前よりBPOサービスの形態を採り入れたデジタルマーケティン領域のソリューションを展開しています。これについては、また機会を見つけて当ブログにて公開してまいります。

茹でガエルになるな!
繰り返しになりますが、
変化する市場環境の中で、印刷業界は重要な岐路に立っています。デジタル化とペーパーレス化の進展は、印刷会社に新たな挑戦だけでなく、未開拓の機会も提供しています。しかし、この変化に対して受動的な姿勢を取ることは、事実上のリスクとなり得ます。茹でガエルの比喩は、環境の徐々に変化する中で、その変化に気づかず、最終的には逃れられない結果に直面することを示しています。印刷業界、その中でもとりわけ中小印刷会社は、この比喩から重要な教訓を学ぶ必要があります。

重要なのは、変化を恐れずに、積極的に新しい機会を探求し、果敢にチャレンジする姿勢です。これからの印刷会社は、単に印刷サービスプロバイダーとしてではなく、顧客のビジネス成長を促進するパートナーとしての地位を確立することが求めまられます。
そのためには、市場のトレンドを継続的に注視しながら、顧客との密接な関係を維持し、常に求められる価値ある解決策を提供する必要があります。
結局のところ、最大のリスクは何も行動しないことです。
今こそ、変化を受け入れ、業界の未来を形作るための勇気ある一歩を踏み出すときだと、私は考えています。

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