閑話休題

不況を克服できずに倒産したケース

中小零細企業にとって『新規開拓マーケティングはただの戦略ではなく、事業の命綱である』と思い至った出来事があります。

私は青年期を経て社会人となり、会社員生活を送った後、30歳の若さで独立起業を果たしました。それから既に30年以上の歳月が流れ、私は多くの企業が倒産していく様子を目の当たりにして参りました。これらの倒産の原因を冷静に分析した結果、新規開拓能力を持っている企業は倒産を回避する可能性が高いこと、一方で新規開拓能力を欠いている企業は倒産の危険が高いことを痛感しました。

1980年代初頭における私の社会人生活の初期の経験は、特に印象的でした。私が初めて勤務したパッケージ会社の取引先である、メリヤスの下着を製造する会社が倒産するという倒産劇を目撃しました。この会社の営業担当として、私は日々訪問営業を行い、幸運にもその会社の工場長が私を気に入ってくれ、下着に付けるラベルや襟に縫い付けるネームラベル、下着を封入する袋など多くの副資材を定期的に発注してくれました。

しかし、担当になって半年が経った頃のある日、突如としてその会社は倒産しました。この出来事は私にとって驚きであり、会社の社長からその会社に向かい、何とかして納品した商品の代金を回収するように命じられました。

戸惑いながらもその会社に向かうと、多くの債権者が詰めかけており、混乱が広がっていました。私のような若者が介入する余地は全くありませんでした。仕方なく、債権者の中で穏やかそうな方に倒産の原因について尋ねました。その方は、「大口のお得意先からの価格交渉が厳しく、数年間にわたり赤字が続いていた。そして、そのお得意先がついに倒産した」と説明してくれました。

当時、繊維業界が全体的に不況だったことは理解していましたが、このような事態になるとは予想していませんでした。しかし、このメリヤス下着の会社は、工場長を含め、皆明るく対応してくれる人たちばかりで、会社自体が健全で黒字経営していると思い込んでいました。実際には赤字が続いていたことに衝撃を受けました。

その後、大口のお得意先が倒産の原因であることについて疑問を感じました。数年前からそんな厳しい要求をしていたのなら、別の大口の取引先を探し、赤字を抱えたお得意先との取引を停止すればよかったのではないかと考えました。

他の債権者にこの点を質問すると、「それができるほど簡単なことではなかった。繊維業界全体が不況で、どの取引先とも同じように厳しい条件が求められたからだ。」との回答が返ってきました。

私は深く考えました。それならば、繊維業界ではなく、別の業界を探すべきだったのではないかと。しかし、これ以上の疑問を債権者にすることは止めました。

私の社会人1年目の経験は非常に印象的でした。そして、この出来事から学んだのは、どんなに太いパイプの上得意先であっても、永遠に頼りにできないということ。表向きは順調そうに見える企業でも、その裏では火の車の状態の場合もあることを認識しました。

そして、最悪の倒産を回避するためには、常に新規開拓を行い、一社への依存度を高めないようにリスク分散させることが重要であるということを痛感しました。

新規開拓マーケティングは、事業の持続性の根幹であり、企業が成功を収めるために欠かせない要素です。私たち中小零細企業は、この点を深く理解しなければと改めて強く感じる今日この頃です。

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