この記事では、広報担当者向けに、新規開拓を担う営業パーソンが日々挑む、新規のお客様との商談を優位に進めるための営業ツール「アプローチブック」作成ガイドをわかりやすく解説します。
目 次
1. アプローチブックとは?
2. 掲載するコンテンツの構成
3. ビジュアルデザイン
4. 商談相手に応じた見せ方
5. 外部業者に依頼するときの注意点
アプローチブックとは?
商談の初対面で最大の印象を残すために、アプローチブックは金科玉条のような存在です。これは、単なる自社紹介や製品カタログを超えた、信頼構築のための戦略的な商談用の営業ツールです。
アプローチブックを手にすることで、お客様は貴社の理念や価値観、事業方針、そして何よりも商品やサービスのコンセプトを瞬時に理解していただけます。このアプローチブックは、ただの営業案内パンフレットのような印刷物を超えてで、貴社とお客様との関係を築き上げる最初の一歩となります。
理念と価値観の伝達
アプローチブックの核心は、新規のお客様との最初の商談に際してお客様が求める「貴社はどんな会社なの?」「どんな営業をするつもり?」「何を売り込もうとしているの?」といった「?」に答えて信頼感を醸成することにあります。これらの疑問に対して、自社の基本的な理念と価値観、営業方針、提供する商品・サービスのコンセプトを簡潔に伝えて共感と信頼を持ってもらう。これにより、お客様に安心して商談に望める基盤を作ります。
価値観と商品コンセプトの明確化
アプローチブックでは、特に自社の価値観と商品・サービスのコンセプトを明確に示すことが重要です。これにより、お客様は貴社がどのような価値を提供しているのか、どのような問題を解決するために存在しているのかを瞬時に理解することができます。また、貴社の提供する解決策がお客様自身のニーズや課題にどのようにマッチするかを見て取ることが可能になります。
信頼の構築と商談のスムーズな進行
アプローチブックの目的は、最終的にはお客様との信頼関係を築き、商談をスムーズに進行させることにあります。この資料を通じて、お客様は貴社の営業姿勢が自己中心的ではなく、常にお客様の立場に立って考え、行動していることを感じ取ることができます。このようにお客様の信頼を得ることは、長期的な関係構築において非常に重要な要素となります。
アプローチブックは、単に会社の概況を伝える会社案内でも、商品・サービスの詳細を伝えるカタログやパンフレットではなく、貴社とお客様との関係の礎を築き、その後の商談活動をスムーズに展開する戦略的なコミュニケーションツールです。
掲載するコンテンツの構成
アプローチブックのコンテンツ構成において最も重要なのは、自社をアピールすることではなく、お客様が『知りたい情報』を、明確かつ簡潔に伝えることです。この項では、お客様の視点から最も価値のあるコンテンツに焦点を当て、それを如何に効果的に構成するかについて探求します。
お客様が抱く不明な点、疑問点を解消
アプローチブックでは、まずお客様が自社に対する『不明な点、疑問に感じる点』を解消することが重要です。まず会社としての経営理念・価値観を示します。その上で、自社の営業姿勢・方針を伝えます。
提供する商品・サービスの価値
提供する商品・サービスが、お客様のどのような問題・課題を解決するのか?提供に際してのプロセスと提供後のサポート体制についても示します。ここで注意していただきたいのは、ハードウェアとしての商品・サービス以上に、ソフトウェアとしての提言・提案といった営業的サポートを強調して示すことです。つまり、『見えづらい価値』にフォーカスすることが重要です。
事例の提示
受注加工品や施工、技術そのものが商品のような場合は、納入事例を示す必要があります。このような場合は、納入実績ではなく、お客様との最初の出会いの経緯から与えられた課題、それをどのようなプロセスで解決したのか?といった道程をストーリーとして提示すると、お客様が自身の状況を投影し、同様の結果を期待できることを実感する手助けとなります。
お客様とのコミュニケーション姿勢
最後に、お客様との継続的なコミュニケーションの重要性を強調します。自社がお客様のフィードバックをどのように受け入れ、商品・サービスの改善に役立てているかを示すことで、お客様との信頼関係をさらに深めることができます。
このようにアプローチブックのコンテンツ構成は、お客様に対して自社の価値を明確に伝えるためのものです。理念から商品・サービスの紹介、事例に至るまで、すべてのコンテンツが一貫してお客様の信頼を得るためのものであることが重要です。
体裁仕様_1 ビジュアルデザイン
アプローチブックは、最初の商談でお客様に提示して営業自ら説明するためのツールです。従って、長くても5分、通常は3分をめどに出来るだけ短時間で説明できるよう工夫する必要があります。そのためには、視覚的な魅力とメッセージ性を通じて、強力な第一印象を残すことが求められます。この項では、レイアウトデザイン、書体選択、そしてコピーライティングが如何にしてアプローチブックの効果を最大化するかについて掘り下げます。
レイアウトデザイン
レイアウトは、コンテンツを視覚的に整理し、読み手が情報を素早く把握できるようにするための技法です。情報の階層を明確にし、重要なポイントがひと目でわかるように配置することで、短時間での情報伝達を実現します。このとき、色使い、余白の活用、視覚的な流れを考慮することが重要です。
書体デザイン
書体は、アプローチブックのトーンとキャラクターを設定する上で重要な役割を果たします。選択する書体は、自社のブランドイメージを反映し、読みやすさと美的魅力のバランスを考慮して選ぶ必要があります。書体の大きさや太さも、情報の優先順位を視覚的に伝える手段として活用します。
効果的なコピーライティング
アプローチブックを使った説明では、最長でも5分、理想的には3分以内に情報を伝達する必要があります。人は一方的な話を5分以上聞くことに生理的な限界を感じるため、短時間でコアメッセージを伝えることが不可欠です。
コピーライティングは、メッセージ性を持たせ、要点を簡潔に伝えることを目指します。長々と説明すればするほど、聞き手は重要なポイントを忘れてしまうため、要点のみを抽出し、強調することが求められます。
ビジュアルデザインは、アプローチブックを通じて貴社のメッセージを如何に効果的に伝えるかに直結します。レイアウトデザイン、書体選択、そしてコピーライティングの各要素は、読み手に強烈な印象を残し、短時間で情報を伝達するために最適化されるべきです。これらの要素が組み合わさることで、アプローチブックは強力なコミュニケーションツールとなり得ます。
体裁仕様_2 商談相手に応じた見せ方
アプローチブックをどのような体裁で提示するかは、受け手の印象に大きく影響します。そのため、体裁は慎重に選択し、商談相手に合わせた最適な方法で情報を提供することが重要です。以下では、異なる提示方法の利点と注意点についてご説明します。
印刷物としての提供
– 利点:手に取って見られる物理的な資料は、記憶に残りやすく、また、商談後も手元に残るため、繰り返し参照される可能性があります。お客様側の担当者が上司への報告、稟議書の添付資料としても活用できることも大きなメリットです。
– 注意点:印刷物の品質は、貴社のプロフェッショナリズムを反映します。従って紙質、印刷技術、デザインの品質には十分注意を払う必要があります。
デジタルフォーマットでの提供(タブレット等)
– 利点:デジタルフォーマットでは、動画やインタラクティブな要素を取り入れることができ、より魅力的なプレゼンテーションが可能です。また、最新の情報に即座に更新することができるため、常に最新の状態を保つことができます。また、お客様個々にフィットした内容にカスタマイズできる点が大きなメリットです。
– 注意点:使用するデバイスの充電状態や互換性など、技術的な問題に対処する必要があります。また、受け手がデジタルコンテンツに慣れていない場合、その利用方法を理解してもらうためのサポートが必要になることもあります。この問題を解消するためには、次の企画提案書との併用をお勧めします。
企画提案書の形式での提供
– 利点:企画提案書形式では、提案内容をより詳細に、かつ構造的に説明することができます。この形式は、特に複雑なビジネスモデルや提案を伝える際に有効です。
– 注意点:長すぎる文書は読まれない可能性が高いため、情報を簡潔に、かつ重要なポイントを強調して伝えることが重要です。特にパワーポイントで作成した場合、視覚デザイン上の限界もあるため、前記のデジタルフォーマットと併用し、商談時の説明はデジタルフォーマットを使い、その記録用として企画提案書形式のプリントシートを手渡すのが良いでしょう。
アプローチブックの体裁仕様を選択する際には、目的とお客様個々の状況を考慮し、最も効果的な方法を選択することが重要です。物理的な印象とデジタルの柔軟性をバランスよく組み合わせることで、自社のメッセージを効果的に伝えることができます。
外部業者への依頼するときの注意点
アプローチブックの実制作を外部の広告代理店やデザイン制作会社、印刷会社などの専門業者に依頼する場合、成功への鍵は適切なコミュニケーションと業者選定にあります。以下のポイントを踏まえて、発注プロセスを管理していただくと良いでしょう。
業者への要件の明確化
プロジェクトの目的と期待値の共有:外注業者に対して、アプローチブックを通じて達成したい目的と期待する成果を明確に伝えます。これまでに検討したコンテンツ構成、デザインの方向性、メッセージ性などの要素を詳細に共有し、業者がプロジェクトの全体像を理解できるようにします。
業者の選定基準
– 過去の実績と専門性:業者を選定する際は、過去の実績や専門分野を慎重に評価します。特に、アプローチブックや類似のマーケティング資料の制作経験がある業者を優先することが望ましいです。
– 理解度とコミュニケーション能力:初期の打ち合わせで業者の理解度を確認し、プロジェクトの要件を正確に把握し、適切なフィードバックを提供できる業者を選ぶことが重要です。
成果物の品質管理
– 中間チェックの実施:制作プロセスの中間において、デザイン案やコンテンツのドラフトをチェックし、方向性が正しいか確認します。この段階で必要な修正を指示することで、期待する品質の成果物を確実に得られるようにします。
– 最終成果物の評価:提供された最終成果物が、事前に設定した基準や期待値を満たしているか評価します。期待に満たない場合は、追加の修正を要求するか、最悪の場合は別の業者を検討する必要があります。
外部業者にアプローチブックの制作を外注する場合でも、プロジェクトの成功は、貴社の明確な指示と業者との綿密なコミュニケーションに依存します。理解度が高く、品質の高い成果物を提供できる業者との協力関係を築くことが、効果的なアプローチブックを実現するための鍵となります。
いかがでしたでしょうか。
新規開拓において、商談の第一関門を突破する営業ツールとしてアプローチブックを作成することをお勧めします。