1.ECサイトを立ち上げるには、何から手をつければいいのか?
ECサイトの立ち上げを検討し始めたとき、多くの企業が最初に直面するのが、「いったい何から始めればいいのか分からない」という戸惑いではないでしょうか。
営業の現場であれば、顧客を訪問し、提案を行い、受注につなげるという一連の流れがイメージできます。
製造の現場であれば、工程ごとの作業や品質管理の考え方も明確です。
しかしECとなると、その全体像が一気に見えにくくなります。
画面の中にある店舗であるがゆえに、どこに何があり、どの順序で準備を進めればよいのかが直感的につかみにくいのです。
そのため、多くの経営者や担当者は、まず手がかりを探そうとします。
「どこから考えればいいのか」
「何を決めれば前に進めるのか」
と考えたとき、自然と“分かりやすい部分”に目が向いていきます。
そして、その最初の関心として浮かび上がってくるのが、
「どの仕組みを使うのか」
というテーマです。
実際にご相談をいただく中でも、早い段階でよく出てくるのが、
「どのカートを使えばよいのでしょうか」
という問いです。
「ECをやるなら、まずは仕組みを決めなければならないのではないか」
「注文の流れをどう作るのかが一番重要ではないか」
「他社はどんなシステムを使っているのか知りたい」
こうした言葉は決して特別なものではなく、むしろごく自然な発想だと思います。
なぜなら、ECサイトの中で唯一イメージしやすいのが、「注文の流れ」だからです。
商品を選び、数量を入力し、購入ボタンを押す。
決済方法を選び、配送先を指定する。
この一連の動きは、日常のインターネットショッピングの中で誰もが経験しています。
そのため、「ここを決めればECが動き出すのではないか」と感じやすいのです。
つまり、EC未経験の企業にとって“カート機能”とは、
「見えにくいEC全体の中で、唯一具体的に想像できる部分」
であり、いわば入口のような存在なのです。
さらに、この流れは外部からの情報によっても後押しされます。
ECの構築を検討し始めると、多くの企業は制作会社やシステム会社に相談することになります。
すると、ほとんどの場合、最初に提示されるのがさまざまな仕組みの比較資料です。
「このサービスならすぐに始められます」
「このシステムは自由度が高いです」
「この仕組みならBtoBにも対応できます」
こうした説明を受けるうちに、
「どの仕組みを選ぶか」
というテーマが、最初の意思決定の中心になっていきます。
もちろん、これは決して間違いではありません。
ECサイトの土台となる仕組みは、その後の運営のしやすさや発展性に大きく影響する重要な要素です。
しかし、ここでひとつ立ち止まって考えていただきたいのです。
制作物という錯覚
WEB業者のシステム比較に追われ「何で作るか」ばかりが議論の中心に

本来、EC事業を始める際に最初に考えるべきことは、
「どの仕組みを使うか」ではなく、
「どのような事業として進めるのか」
ではないでしょうか。
・なぜECに取り組むのか
・どのような顧客に向けて展開するのか
・営業活動の中でどのような役割を持たせるのか
こうした点を整理する前に、仕組みの選定から議論が始まってしまうと、
後になってさまざまなズレが生じてきます。
この背景には、ECサイトが「制作物」として捉えられやすいという事情もあります。
ホームページのリニューアルやパンフレット制作と同じように、
「仕様を決めて発注すれば完成するもの」
という感覚で考えてしまうと、どうしても議論は
「何で作るか」
に集中してしまいます。
しかし実際には、ECは“作って終わり”ではありません。
そこから始まる運営こそが本質です。
にもかかわらず、最初の段階で仕組みの選定が最大のテーマになってしまうと、
「何のためにECを行うのか」
という根本的な問いが後回しになってしまうことがあります。
私はこれまで、多くの企業のEC立ち上げに関わってきましたが、
この順序が逆転していたケースほど、後々になって課題が表面化する傾向があると感じています。
実際に運営が始まってから、
「自社の商売に合わない」
「現場の負担が大きすぎる」
「思ったように売上につながらない」
といった問題に直面し、初めて立ち止まる企業も少なくありません。
つまり問題は、カート機能や仕組みに関心を持つことではなく、
そこから検討を始めてしまうことにあります。
ECに初めて取り組む企業が、分かりやすい部分から考えようとするのは当然のことです。
しかし、だからこそ一度視点を引き上げて、
「本来、何から考えるべきなのか」
を見直すことが重要になります。
そして、そのうえで初めて、
「どの仕組みが自社に合っているのか」
という判断が意味を持つようになります。
では実際に、ECサイトを支える“仕組み”にはどのような種類があり、それぞれどのような特徴を持っているのでしょうか。
次に、その全体像を整理して見ていきたいと思います。