閑話休題

受注形態のマーケティングの基本 ①

前回に引き続き、今回も事業形態別及び売り先の業態を組み合わせた4つの象限ごとのマーケティングの基本戦略を整理してお話しします。

今回は、下記の表組の右上に位置する『受注形態+BtoC』についてご説明します。

このカテゴリーに該当する代表的な企業としては、服飾業界ではオーダーメイドスーツ店、住宅業界では注文住宅、自動車修理業などが挙げられます。

よく考えてみると、消費者向けの高額商品・サービスの大半は受注形態になります。お客様の個々の要望に応じた商品・サービスを提供することで満足度を高め、その代わりに高額な料金を頂戴するのです。

かつて、ある裕福な方を取材した際、納車されたばかりの新しいロールスロイスで取材場所に来られました。その際に伺った話では、ロールスロイスは完全な注文生産であるとのことです。車台(シャーシ)やエンジン、外観の基本フレームは予め設計されていますが、内装に関してはすべて特注です。注文から納車まで最短でも1年はかかるそうです。内装の座席に使用する皮革やウッドのデザインもお客様の好みに応じて作られます。価格は非常に高く、具体的な金額は伺えませんでしたが、おそらく5,000万円以上ではないかと感じました。

この受注形態は、戦前(1940年以前)までは、ほとんどの商売・事業がオーダーメイドでした。衣食住のすべてが、お客様からの注文を受けてから作られるのが一般的でした。

しかし、戦後になると、機械化やオートメーション化が進み、予め決められた形や性能の商品を大量生産する時代に変わりました。私が子供の頃は、大量生産・大量消費の変革期だったと記憶しています。つまり、前回お話しした見込形態の商品は、比較的新しい形態で、後進国が経済成長するための一つの流れだったのでしょう。

その流れが主流になると、受注形態の事業や商売は廃れていきました。戦後の昭和時代には、「あの人と同じものを所有したい」という願望が強かったように思います。

しかし、高度成長が終わり成熟期に入ると、「あの人と違うものを所有したい」という流れに変わりました。それに応じて、同一商品の大量生産から多品種少量生産、あるいは多品種変量生産が主流になりました。

そして、個々の個性が尊重される時代、そしてデジタルAI時代の今、再びオーダーメイドが注目されるようになってきました。

これは、今後オーダーメイド型のネット通販が本格的に隆盛を極める可能性があると予測します。オーダーメイドの靴や洋服などは、すでにネット通販で実現していますが、まだ解決すべき問題点もあり、普及は進んでいませんでした。しかし、AIの普及によりこれらの問題点が解消されると、オーダーメイド通販が本格化すると予測します。

余談が長くなりましたので、本来のマーケティング的観点に戻ります。

見込形態では、商品力が売れるか売れないかの鍵を握っていました。そのため、プロモーションを展開する際には、商品に焦点を当てた訴求が重要です。

それに対して受注形態では、商品よりも作る人、作る会社・組織に焦点を当てた訴求が大切になります。今、改めてブランド訴求が重要視されていますが、受注形態では、商品ではなく、作る人や作り方をブランド化することが、一つの大きなポイントです。

ブランド訴求については、近いうちに詳しくお話しします。

次回は、『受注形態+BtoB』についてご説明します。

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