閑話休題

受注形態のマーケティングの基本 ②

今回は、下記の表組の右下に位置する『受注形態+BtoB』の事業形態についてご説明します。

このカテゴリーに該当する代表的な企業としては、印刷業及び印刷関連業、金属加工業をはじめとする部品製造業、建築・土木建設業、工場やプラント建設など、数え上げればきりがないほど多岐にわたります。

法人向け受注業の代表例として、製造業と建設業に限定すると、日本国内の製造企業数は約38万社、建設業者数(建設業許可業者の登録数)は約47万社(出典:2020年の中小企業白書統計データ)です。製造業では、そのうち約67%が受注形態の事業であり、建設業ではほぼ100%が受注形態です。

さらに深掘りして、下請け受注の割合を見ると、製造業で約67%、建設業で約49%となっています(ただし、下請けをどう定義するかによってデータは変わるため、数字自体に絶対的な意味はありません)。

受注業の特性は、儲かりにくいが大損もしにくい、成長性は低いが倒産もしにくい、といったものです。下請け受注(受託請負)になると、これらの特性がさらに鮮明になります。

これは私の個人的な感覚ですが、日本の経済やものづくり技術を支えてきたのは、中小零細の下請け企業だと考えています。日本の経済成長が止まった2000年前後は、日本の大手企業が国内の下請け企業を切り捨て、生産工場や下請け外注先を海外に移した時期と重なります。その結果、日本の製品(特に電化製品や半導体系製品など)の世界市場での競争力は低下しました。もし、その苦しい時代を耐え忍び、下請け中小零細企業と協力して地道に研究開発を続けていたら、今頃は世界をリードする革新的な製品を生み出せていたのではないかと思いますが、これは私だけの考えでしょうか?

閑話休題、話がそれてしまいましたので、本題に戻ります。

今回は、『受注形態+BtoB』の事業形態の典型例として、下請けの製造業に焦点を当てて話を進めます。

ものづくりの街として知られる大阪の東大阪市や東京の太田区などの金属加工業が、その象徴としてよく取り上げられます。そして、その取り上げられ方は、技術的な側面からのアプローチが多いように感じます。これにより、金属加工業=技術力が重要というイメージが強調されがちです。

しかし、私はこのようなイメージが間違ったマーケティング・営業姿勢を生み出しているのではないかと考えています。

金属加工業の多くは部品加工であり、発注元は完成品メーカーです。私が関わった切削加工会社D社の例を挙げると、発注は商社や販売代理店を経由してD社に届きます。時には同業者からの依頼もあります。

D社が昨年、自社のウェブサイトをリニューアルすることになり、私に相談がありました。私は仕事とは無関係な知人の仕事を引き受けない方針ですが、基本的なアドバイスをしました。その内容は以下の通りです:

1. 加工技術力を強調しすぎないこと。

2. 工場内を隅々まで写真撮影して掲載すること。

3. 設備をすべて記載すること。

4. 加工対応可能な金属素材を詳細に記載すること。

5. 請け負う際に必要な図面の精度を記載すること。

6. 納期対応についての方針と加工内容別の具体的な納期実績を記載すること。

7. 対応できない(苦手とする)加工を記載すること。

8. これまでの加工事例を、週に1つでも定期的にブログに掲載すること。

このアドバイスから3ヶ月後、リニューアルされたウェブサイトが公開されましたが、私の進言はほとんど無視されていました。設備内容についても、新しいもののみがイメージ写真と共に掲載され、古い設備は記載されていませんでした。また、加工事例のブログも設置されていませんでした。

D社の社長に新しいウェブサイトの内容について尋ねると、「WEB制作会社の社長がブランディングに長けており、彼の提案したプランに従った」とのことでした。社長は、私のアドバイスを古いと感じ、時代に合わせたデザインの進化を重視したと述べました。

約一年後、D社の社長にウェブサイトの効果を尋ねると、「社員や仕事仲間からの評判は良いが、新規開拓には影響がない」とのことでした。社長は、ウェブサイトが加工技術力をうまく表現していると感じていましたが、実際には新規の引き合いはなく、業界全体も冷え込んでいるとのことでした。

私は、この社長が受注形態のBtoBビジネスの本質を理解していないと感じました。

次回は、受注形態 + BtoBの本質と、新規開拓マーケティングの基本戦略についてお話しします。

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