閑話休題

法人であれ、個人であれ、売り方の基本は同じ

前回の話では、事業形態に応じたマーケティングの手法に焦点を当てましたが、今度は売り先がマーケティング手法にどう影響を及ぼすのかを掘り下げて考察しましょう。売り先を大別すると、『BtoB(企業間取引)』と『BtoC(対消費者取引)』があります。これらは、マーケティング戦略を考える上で非常に重要な区分です。しかし、ただ一般論を述べるのではなく、実際の戦略を立てる際には、さまざまな要素を考慮する必要があります。

まず、BtoB取引の場合、購買意志決定は通常、複数人の合意形成を必要とし、製品やサービスの価格、品質、信頼性といった要素を慎重に比較検討します。ここでの意志決定は、企業の利益を最大化することを目的とし、長期的なビジネス関係を築くことにも重きを置かれることが一般的です。しかし、その過程においては、個々の担当者の専門知識、過去の経験、そして感情が大きく影響することが現場ではしばしば観察されます。

BtoC取引においては、消費者個人の購買意志決定が行われます。日用品の購入に際しては、消費者は時間をかけずに、短期間での直感的な決定を下す傾向にあります。一方で、自動車や住宅といった高額な買い物の場合は、家族間での議論を経た上で購入が決定されることが一般的です。ここでは、消費者の感情や価値観が、価格や機能を超えて、購買行動に大きな影響を与えることが多いです。

しかしながら、多くの経験を積んだ私の観察によれば、BtoBもBtoCも購買意志決定プロセスにおける違いは、実はそれほど大きくはありません。中小企業であれ、大企業であれ、最終的な決定は個人の好み、価値観、時には感情に基づいて行われることが多いのです。例えば、BtoBでは、製品の仕様や購入するサービスに関して、経営者の個人的な好みや、時には過去の経験に基づく先入観が影響を与えることがあります。また、BtoCでは、ブランドのイメージや消費者自身のライフスタイルに合致するかどうかが購買を決定づけることがしばしばあります。

さらに、意志決定のプロセスには、企業文化や組織構造といった要素も関わってきます。BtoBでは、一人の意志決定者がいる場合もあれば、委員会や複数部門による合意形成が必要な場合もあります。

それぞれの組織内の政治的な力学や、組織メンバー間の関係性が意志決定に影響を及ぼします。BtoCの場合、市場トレンドや消費者グループ内の意見リーダーの影響を受けることもあります。

このように、BtoBとBtoCの間で購買の意志決定プロセスには違いがあるように見えますが、根底には「人間」という共通の要素があります。合理的な判断がなされるべき状況であっても、感情や直感が結論に至る道筋に色をつけることは、ビジネスの世界で頻繁に起こります。

次回は、これらの知見を踏まえ、見込形態と受注形態、BtoBとBtoCという4つの象限ごとの特徴を整理し、それぞれのマーケティング基本戦略について詳しくご説明します。

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